シゴトビトの言葉学
[第51講] 有限会社アイシンフォレスト 松倉 彩歩のコトバ
毎月1回開催の「しごとトークカフェ」。そこで社会人のゲストが語る、働き方、暮らし方、生き方とは?岩手で働く社会人たちからのメッセージを「シゴトビトの言葉学」として紹介します。
広葉樹の森を目指して
東京都江東区出身。高校時代、進路を考えたとき「やっぱり自然が一番」と都内にある、自然環境と野生動物保護について学ぶ専門学校に進学した。在学中に岡山県で森林整備のボランティアに参加。山仕事の楽しさを体験し、将来の仕事を林業に。森の仕事は全国どこでもできたが、マツやスギなど針葉樹ではなくナラやサクラ、ブナなど広葉樹が多い現場で働きたいと、専門学校を卒業後20歳で岩手県に。給付金を受けながら学べるいわて林業アカデミーで1年間学び、葛巻森林組合に入職した。
林業アカデミーから広がる輪
いわて林業アカデミーは岩手県が運営する研修施設で2017年に開講。2023年度が7期目で、これまで96人が修了している。期間は1年間で214日1,490時間の実習中心の研修を受ける。講師は各分野の専門家で、知識や技術だけでなく必要な資格(9種類)が取得できる。就業支援も充実しており、インターンシップのあっせんや就職の面倒まで見てくれる。アカデミーのメリットは学びだけでない。一番のいいところは同世代と交流があること。ほとんどの林業現場では若い担い手が少なく、アカデミーの同期とのつながりは大切で、今でも時々会って情報交換をしている。
森林組合から民間企業へ
アカデミーを修了し、最初に就職したのは葛巻森林組合。2年間お世話になり、さまざまなことを学んだ。そして2023年4月に現在の会社に。決め手は、この会社でインターンシップをしたアカデミーの同期から「あそこはいいよ」という話を聞き、アカデミーの講師から「林業に対して熱い情熱を持った社員が多い」とアドバイスを受けたから。実際に入ってみると、熱い人がいっぱい。雇用環境も充実しており、入社してよかったと感謝している。
「自分の山」を持ちたい
山仕事のやりがいは「山が整う」こと。ある現場ではトゲのある植物が繁茂し、作業の一歩をなかなか踏み出せなかった。刈り払い機を手に意を決し前進。ようやく作業が終わり振り返ると、山の姿は見違えるようになっていた。「やってよかった」。伐採でも自分が狙った方向に木を倒すことができたときの喜びは格別だという。日々山に入る仕事をしているが、休日も登山や川遊び、そしてバードウオッチングと野外活動派だ。「将来は自分の山を持って、自分の好みの山に」。現場で働く女性たち7、8人と連絡を取り合っている。これからも女子の力で岩手の林業を盛り上げていく。
松倉 彩歩(まつくら・さほ):
東京都江東区出身。環境について学ぶ専門学校在学中に岡山県の林業ボランティアに参加。伐採など山の仕事の楽しさを知り、給付金を受けながら林業技術を学べる「いわて林業アカデミー」に。1年間の研修を経て葛巻町森林組合入り。2023年4月から北上市の有限会社アイシンフォレストに。
有限会社アイシンフォレスト:
北上市大通3丁目11番地29号。会社設立は1970年9月1日。「林業で豊かな郷土を創る」をテーマに山づくり、特殊伐採、造林・育林、薪販売などをしている。
\松倉さんの言葉を聞いた、参加者のコメント/
・林業というと男性の職業というイメージが強かったので、若い女性も木を倒し山で作業していると知って驚きましたしカッコイイと思いました。
・年齢の近い女性が、男性社会だと思っていた林業界でポジティブに活動しているのが、凄いと感じました。
・林業について知ることができました。森などは身近ですが、仕事内容を知り整備する人がいるからきれいな景色や安全が守られている事を知りました。
「しごとトークカフェ」は2010(平成22)年度にスタート。松倉さんは153人目のゲストでした。