SYU-KATSU SPICES就活に役立つ話題集

シゴトビトの言葉学

[第52講] たまやま温泉Lab 代表 一ノ渡 渉のコトバ

毎月1回開催の「しごとトークカフェ」。そこで社会人のゲストが語る、働き方、暮らし方、生き方とは?岩手で働く社会人たちからのメッセージを「シゴトビトの言葉学」として紹介します。

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農業が好きで乳製品が好き

盛岡市玉山下田生出(おいで)で生まれ育った。地元の小中学校を卒業し、盛岡農業高校に。植物の栽培をすることが好きで、高校時代には自宅の農業を手伝いながら、日本では珍しい外国産の種を輸入して育てていた。札幌市の大学に進学し、微生物や食品科学を学ぶ。就職活動は「食品と農業に関わる会社」を軸にUターンを考え、関連する県内企業をピックアップ。公募していない企業にも電話を入れるなど、積極的に行動した。就職したのは地元の食品メーカー。約10年勤務した。
1日に1リットルの牛乳パック2本と業務用の箱入りアイス1箱を平らげるほど乳製品が好きで、乳製品づくりで起業しようと決め「人がやっていない商品を」と地元産の生乳を使ったジェラート、チーズ作りを始める。工房も店舗も地元にこだわり、生出地区にある宿泊温泉施設「ユートランド姫神」に、たまやま温泉Labを開いた。生乳を提供しているのは生出の佐藤牧場。高品質の生乳を原料に作ったジェラートとチーズはおしいいと評判になった。

企業とコラボ

1キロのチーズを作るのに10キロの生乳を使う。残りはホエイと呼ばれる副産物で、栄養価が高く、廃棄するには産業廃棄物としての処理が必要になる。自身は畑にまいて肥料として使っていたが、北海道では家畜の餌として利用し「ホエイ豚」ブランドもできていた。何か利用方法ないかと考えていたとき、金ケ崎町で「酒造 x 農業 x デザイン」の3つのコンセプトで酒造りをしている会社を見つけ相談したところ、ホエイを使ったリキュール造りの提案を受けた。「ほかでやっていないうちに先にやろう」。本人は下戸だが、女性の副代表が試飲し、商品開発を進めた。ホエイを使ったリキュールは県内では初、全国でも珍しいという。「お客さんを引き付け続けるため、新商品は必要。ジェラートでもチーズでもリキュールでも新しい味で勝負したい」

朝から深夜まで

朝6時から仕事を始め、深夜零時過ぎまで工房にいることも珍しくない。農家で育ち、会社員時代は朝3時から畑仕事を始め、7時に出勤、夕方6時に帰宅して深夜までトラクターを運転していたこともあるという。「起業してから3年、休んだのは妹の結婚式のときだけ。その日も工房には顔を出した」。でも会社員時代と比べ、自営となって気持ちは楽になったそうだ。時間があれば畑仕事をしたいそうで、空き時間があればネットサーフィンをして乳製品についての論文などを調べている。
2025年春には道の駅もりおか渋民に工房を構える。現在の工房と二つを運営する形になるが「販路拡大で数量確保が必要になると働く人も商品も疲弊してしまう。地元にこだわり身の丈にあった事業を続けたい」。
自分の起業には、材料を混ぜ合わせながら殺菌してジェラートを作るためのパステライザーなど設備投資がかかった。業種によってはパソコン一つでもできる起業もある。「自分で決めることを大切に、すべては自分に返ってくる。そんな仕事もいいのでは。みなさんにも頑張ってほしい」とエールを送る。
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一ノ渡 渉(いちのわたり・わたり):
盛岡市玉山出身。盛岡農業高校から北海道の大学に進学。卒業後、Uターンし食品製造会社に。消防団にも入り地元とつながるなかから、地域活性化を考え始める。2021年「ユートランド姫神」の貸工房でジェラートづくりの「たまやま温泉Lab」を起業。

たまやま温泉Lab:
盛岡産生乳からジェラートやチーズを製造。チーズ作りの副産物ホエイでリキュールづくりにもしている。2025年には盛岡市が国道4号渋民バイパス沿いに整備している「道の駅もりおか渋民」にテナントとして入居予定。

 

\一ノ渡さんの言葉を聞いた、参加者のコメント/

・好きなことしかしたくないという信念は自分とも似ている部分があったので楽しく聞くことができました。私は転職したばかりですが、また次の道を考えるタイミングも来るので信念を大切にしていきたいと思います。
・自分の考えは自分で決めるっていわれた時は自分でも大事だなと思ったし、やっぱりいいことだなと思ったので自分も農業で頑張っていきたいと思います。
・自分の好きなことを仕事にするということについてリアルなお話を聴くことができ、とても良かったです。全ての責任を負わなければならないという大変さがありつつも、自分の身の丈に合わせた自由な働き方ができるという点が印象に残り、また魅力に感じました。
・仕事の仕方や働き方は1つではなく、色々な仕方があると感じました。自分自身まだまだ型にはまった見方をしてしまっている所があるので、今後求職活動をしていく中で、視野を広くして活動していきたいと思います。


「しごとトークカフェ」は2010(平成22)年度にスタート。一ノ渡さんは155人目のゲストでした。