シゴトビトの言葉学
[第49講] JICA国際協力機構 JICA岩手デスク 市川 雅美のコトバ
毎月1回開催の「しごとトークカフェ」。そこで社会人のゲストが語る、働き方、暮らし方、生き方とは?岩手で働く社会人たちからのメッセージを「シゴトビトの言葉学」として紹介します。
野生動物と環境教育
福島県いわき市出身。小学2年のとき、NHKのドキュメンタリーで野生のライオンを見た。「アフリカで野生動物の調査をしたい」。その夢を持ち続け大学は野生動物研究室がある東京農大に。学生時代はアンテナ片手にタヌキを追いかける日々を送った。卒論は動物の生態を知らない人たちに自然の大切さを教える環境教育がテーマだった。その教育活動の面白さに目覚め、野生動物に加え環境教育に携わることがもう一つの夢に。屋久島でツアーガイドを経験した後、自然体験プログラムのノウハウを持つキープ協会(山梨県清里)に入り学びを深めた。
東日本大震災が転機に
同協会で実習生をしていたとき東日本大震災が発生、いわき市の実家が地震で被災した。父親と死別し、一人暮らしだった母親とともに神奈川県などを転々として避難生活を送る。住処も仕事も変わる不安定な日々が5年続いた。そんな生活に疲れ果て「もう限界」と感じたとき、人生をリセットし、自分をリフレッシュするためワーホリで海外に行くことを決める。渡航先はニュージーランドとカナダ。合わせて1年半のワーホリでは趣味のフィッシュングで大きなサーモンを釣り上げたり、ヒグマなど野生動物と間近に出会ったりした。
念願のアフリカに
そんなリフレッシュ期間を経て、そろそろ夢実現のため頑張ろうと次の進路をJICA海外協力隊に。選んだのは東アフリカ、ウガンダ。職種は「環境教育」。同国には湿地に関する国際条約、ラムサール条約で貴重な地域と指定された「ルテンベの湿地帯」があり、約350種の鳥類が生息している。与えられたミッションは湿地資源を活用した観光プログラム推進、地域の生徒を対象にした環境教育プログラムの企画・実施。地元のNGOに配属され、先ずスタッフの待遇を改善してモチベーションを上げようとバナナの皮で籠を作り、販路を開拓し、地元の児童生徒に湿地にどんな動物が暮らしているかを教え、ごみのポイ捨て禁止を啓蒙した。
夢を叶える道の途中
JICA海外協力隊の2年間はあっという間に過ぎた。大好きなウガンダにもっと居たかったが、帰国しもっと学びたいこともあった。「しっかりとしたデータで裏付けられた環境教育を実践したい」と帯広畜産大の大学院に入り、農家にとって獣害となっているアライグマの調査研究を2年間行った。
子どものころ、教師から「不動心がある」と言われた。子どものころからの夢を諦めず、それを実現するために頑張ってきた。「チャンスをつかむため、準備することを忘れずに」。大学教員のアドバイスだ。“アフリカをフィールドに環境教育を”夢実現のため「JICA岩手デスクの仕事も精一杯取り組みたい」
市川 雅美(いちかわ・まさみ):
東京農業大学卒業後、屋久島のエコツアーガイド、山梨県でネイチャーガイドのスキルを学び、ワーキングホリデーでニュージーランドとカナダへ。帰国後、JICA海外協力隊でウガンダに。帰国後、帯広畜産大学大学院で修士課程を修了し、2023年春から現職。
独立行政法人JICA国際協力機構:
JICA海外協力隊など開発途上国への技術協力、研修員受入、専門家派遣、機材供与、有償資金協力、無償資金協力、海外移住者・日系人への支援、緊急援助のための機材・物資の備蓄・供与などをしている。JICA岩手デスクは、岩手県内唯一のJICAの出先機関。
\市川さんの言葉を聞いた、参加者のコメント/
・夢に向かって努力することの重要性を学びました。好きなことで生きていくすばらしさを感じました。
・挑戦する事の大切さ、自分もチャレンジしなければと思いました。
・JICAについてよく分からないまま参加しましたが、市川さんの経歴等、楽しいお話であっという間の1時間でした。
「しごとトークカフェ」は2010(平成22)年度にスタート。市川さんは151人目のゲストでした。