シゴトビトの言葉学
[第45講] 株式会社アースカラー 代表取締役社長 高浜 大介のコトバ
毎月1回開催の「しごとトークカフェ」。そこで社会人のゲストが語る、働き方、暮らし方、生き方とは?岩手で働く社会人たちからのメッセージを「シゴトビトの言葉学」として紹介します。東京都墨田区出身で大学卒業後、グローバル志向もあり国際物流会社に入った。4年間勤め人材育成・教育のベンチャー企業に。30歳でサラリーマンを辞め2010年、地球や大地と共生する職業人づくりを目指しアースカラーを設立。千葉県で自然農法のコメ、大豆作りを実践し、子どもが生まれたことを機に妻の出身地八戸市から近い岩手県北の沿岸部へ移住した。2013年に立ち上げたNPO法人「地球のしごと大學」を通じて約100人の移住や仕事づくりを後押してきた。原点は、働いている大人の目が輝いていないこと。生きがい、やりがいやにつながる仕事をしても市場から評価されず、短期の成果を求められ、多くの人はあきらめ、ちょっと目を曇らせながら生きている。地球環境のためなど生きがいややりがにつながる仕事を地域で再評価し、大人たちの目が輝くようにしたい。
県内唯一の“森のようちえん”
事業の一つに森のようちえんがある。北欧で生まれた活動で、原則屋外で子どもたちを保育する。妻が中心になって運営する「つちのこ保育園」は県内唯一の森のようちえんで、開拓した山や近くの海、川など村の自然を使って子どもたちを育てる。子どもたちは自分で遊びを工夫し、どうすれば危険を避けられるかを知る。保育に携わる多くの人たちは「いい学びになる」とは思うものの、1人の子どもに3人のスタッフが要るなどお金がかかり、運営が大変で田舎でも都会同様、自然から遠く離れた保育になってしまう。本当にいいことだったら、それが保育でも地球環境問題でも正当に評価され、仕事として続けられるようにしたい。そんな社会をつくるためには過疎の農山漁村から始めるのがやりやすい。
地域貨幣で結ぶ新たな循環型社会
「地球のしごと大學」では大量生産大量消費のグルーバル経済からローカルへの価値観転換を目指し、さまざまな学びを開放している。仕事のための知識や技術も大切だが、まずは価値感を変えてから。持続可能な農山漁村のために必要な事業を地域で展開する。必要な人材は事業数と同じ約150人。うち半分は地域協力隊など外部からの移住者が担う。ふるさと納税や疎開保険などの制度を利用し、伝統的な仕事に最新技術を取り入れ「飯が食えるように」。いわば地域版SDGsだ。将来は「鎮守の森」という地域通貨を使い、ベーシックインカムでサステナブルな仕事を支え、地域に人材を集め、独自の自立経済圏をつくるのが目標だ。環境省の地域循環共生圏に登録し、実現を目指す。
輝く大人がいる社会が本当の子どもの教育
さまざまな事業のなかで赤字のものもあれば、とんとんや黒字もある。収入の半分は自治体からの委託事業で、移住者支援や仕事づくり、伴走支援などをしている。地域社会を維持するために大事なのは子どもたち。子どもがいないと地域は維持できない。だから学校の学びが大事。でも一番大切なのは生きがいややりがいを持って仕事をする大人たちだ。地域社会で自営業などで誇りを持って働く大人たちが教科書。そんな人たちがいればそれが素晴らしい教育になる。
高浜 大介(たかはま・だいすけ):
1979年東京都生まれ。立教大観光学部卒。2010年、(株)アースカラー設立。NPO法人「地球のしごと大學」を通し約100人の農山漁村への移住やオルタナティブな仕事創りを後押し。2018年家族で岩手県に移住。 都心からの移住希望者の受け皿を作り、サステナブルな地域社会経済のモデル創りを過疎地に住み挑戦している。
株式会社アースカラー:
普代村2下村84−4国民宿舎くろさき荘内。地球をサステナブルな世界に変えていくため、まず足元の小さなローカルをサステナブルにしていく活動として農山漁村活性化、人材育成、ハンズオンコンサルティング(伴走支援)などの事業を行っている。チームメンバー6名(事業推進部、総務・財務・経理統括、養蜂・農業ビジネス、林業事業部)。
\高浜さんの言葉を聞いた、参加者のコメント/
・想像もしていなかったような新しいお仕事に触れたような感覚です。理念、理想に向かって着実に前に進む実行力に大変驚かされました。
・地球や地域のために活動されていて素晴らしいと思いました。今すぐは無理ですが、将来は協力できたらいいと思いました。
・「良心を全開にして誰もが生きられる」という言葉が印象に残りました。自分もその社会の一員になりたいと感じました。
「しごとトークカフェ」は2010(平成22)年度にスタート。高浜さんは147人目のゲストでした。