シゴトビトの言葉学
[第42講] “まちづくり支援会社”カダル 代表 藤岡 裕子のコトバ
毎月1回開催の「しごとトークカフェ」。そこで社会人のゲストが語る、働き方、暮らし方、生き方とは?岩手で働く社会人たちからのメッセージを「シゴトビトの言葉学」として紹介します。
13年間暮らした首都圏からUターンし、矢巾町の地域おこし協力隊に。3年間活動し2020年12月に任期を迎えた。「好きな矢巾町に残る方法は『起業』しかない」と思い立ち2021年3月一般社団法人「カダル」を立ち上げる。JR矢幅駅に直結した、矢巾町まちづくりステーション「ハバターク」に事務所があり、常勤2人、非常勤1人のスタッフとともに仕事をする。掲げた理念の一つは「日常に彩りを添えるパートナーとなり、地域の“ものがたりづくり”の一助を担う」。団体名のカダルは地元の方言で「伝える」と「仲間になる」という意味がある。まちづくりの主役は住民で、脇役としての立場から自らを「まちづくり支援会社」と呼んでいる。
「あったらいいな」を形に
町のことを住民に聞くと「何もない所」という答えが返ってくる。盛岡市のベッドタウンとして発展してきた歴史があり地元意識は希薄だ。町を知るための勉強会や座談会、そしてワークショップなどを開催。お正月の書初めから年末のクリスマスまでさまざまな行事や地元飲食店と提携し駅で弁当を販売する「やはメシ」など「あったらいいな」を形にしてきた。煙山ひまわりパークは広大な農地に広がるひまわり畑が観光地となっていた。でも滞在時間が短いなど課題があった。地域の大工さんに「ドアを作りたい」と持ち掛け「どこでもドア」を実現したり、鐘を鳴らすための鉄製アーチをひまわりの花で飾ったり。「地元に興味を持ってもらい、町を考えるきっかけに」と活動を続ける。
東京で4つの仕事
大学進学時、神奈川県出身の母親が「広い世界を知りなさい」と東京へ送り出してくれた。人と関わることが好きで卒業後は営業職に。都会暮らしは楽しかったもののここは半年で辞め大手飲食店で3年、アパレルで1年、テーマパークで4年仕事をした。それぞれの職場で社会人としての基礎や接客能力、チームワークに指導力、そしてプロ意識などを学んだ。「いろいろな仕事を経験することでできることも増えた」と転職を肯定的に捉える。「30歳ぐらいで地元に」と思っていたが、ショービジネスにもつながる最後の仕事が面白く、目標の4年後のUターンとなった。
地元を元気に
Uターンを考えていたころ「いわて 元気にする仕事」で検索し、矢巾町の地域おこし協力隊に出会う。小さいころから合唱が好きで「不来方高校が憧れ」。迷うことなく応募した。協力隊のミッションは地方創生と情報発信。それに「食・農」そして「人を喜ばせ、誰かの役に立つ」を掛け合わせ、FMラジオやYouTubeなどで「地元野菜を使ったメニュー」などを情報発信した。3年間の活動で得た人のつながりが宝で「今も支援を受けている」と感謝する。「失敗はしないほうがいいが、リカバリーできるなら失敗はしたほうがいい」。「やはば愛」をエネルギーに活動を続ける。
藤岡 裕子(ふじおか・ゆうこ):
首都圏で人と関わるさまざまな仕事を経験。岩手を元気にしたいとUターンを決意。2018年1月に矢巾町地域おこし協力隊。3年の活動後の2021年3月一般社団法人カダルを設立し、代表理事に。
一般社団法人カダル:
代表理事のほかスタッフ3人。矢巾町や同町観光協会などから業務委託を受け、同町唯一の“まちづくり支援会社”として、地元や岩手を元気にする事業に取り組んでいる。
\藤岡さんの言葉を聞いた、参加者のコメント/
・仕事を楽しみながらしている感じが伝わってきて、ステキな生き方だなと思いました。自分のやりたいことに全力で取り組み、楽しそうに過去を語る姿は、学生や進路に悩む若者を勇気づけると思いました。
・失敗のリカバリー経験が大切だという話が印象に残りました。様々な職で経験を積んでこられたということで、私も転職活動を頑張ろうと思いました。
・矢巾町への愛がとてもよく伝わり、すごくわくわくしました。「やはメシ」やひまわり畑のプロジェクトなど私自身もすごく参加してみたいイベントです。機会があればハバタークにも伺ってみたいです。
「しごとトークカフェ」は2010(平成22)年度にスタート。藤岡さんは144人目のゲストでした。