SYU-KATSU SPICES就活に役立つ話題集

シゴトビトの言葉学

[第41講] セレクトショップpen. 代表 菊池 保宏のコトバ

毎月1回開催の「しごとトークカフェ」。そこで社会人のゲストが語る、働き方、暮らし方、生き方とは?岩手で働く社会人たちからのメッセージを「シゴトビトの言葉学」として紹介します。41-title一関市生まれ。父親の異動で、3年おきに引っ越しを繰り返した。沿岸や県北などさまざまな所で暮らし、雫石町の中学から盛岡市の高校へ。パソコンを使いデザインなどを学ぶ専門学校に進学したが、「就職しない」と口にする学生だった。心配した先生から「ここに行ってみたら」と勧めら、革パンツにブーツ、バイクで向かったのが盛岡市内の出版社だった。小さな会社の社長はライターで編集者。「就職しなくていいから人生勉強だと思って来てみたら」と温かい対応をしてくれた。本のデザインや文章書き、写真撮影を手伝うなか、出版社に集まる個性豊かな大人たちと触れ合った。「大人は面白い」。この経験が20歳の若者を変えた。

形見の腕時計

人との出会いがあった出版社勤務だったが、仕事の貢献度は「お金が取れない」レベルで、やっていることも中途半端という自覚があり1年ちょっとで辞めることに。ハローワークに行き仕事を探し、「接客も好き」なのでホテルにフロントマンとして就職し、結婚もした。そのころ、中学時代からの親友が、がんで闘病中の母親から「50万円あるからこれで何か買いなさい」と言われ、腕時計を買ったという話を聞き雷に打たれたようなショックを受ける。母親の想いがいっぱいの時計。自分もそうした商品を売りたい。「もうホテルには居られない。時計を売りたい」とフロントマンを辞める。目指したのは盛岡市内の時計宝飾の専門店。求人はなかったのでお客として行き、お店の雰囲気を体感。お客さまへの対応が良かったので、その場で履歴書をお店に渡した。社長面接を受けて、採用となった。お客さんが納得したうえで、腕時計などを販売する。そんな商売にやりがいがを感じ、その店には結局10年間勤務した。

対面販売の意味

「35歳までに何かやる」と周囲に吹聴していた。そんなころ、東日本大震災が起き、翌年、良く知る先輩が原因不明で亡くなった。やりがいもあった専門店を辞め、自分で店を開くことに。「うまくいかなくても失敗ではない。やらないのが失敗」。開店当初は気合が空回りし、なかなか売り上げは伸びなかった。「これいいですよ」と本当に思っていないとなかなか物は売れない。「お客さまにいかに楽しんでもらい、感動してもらえるか」。それが一番という。開店して8年目。2016年には100%浄法寺産漆塗りのオリジナルボールペン「japen(ジャペン)」を、2019年にはオリジナル万年筆インク「いわてのいいイロCOLOR INK」を発売した。インターネットでの販売はせず、店頭の対面販売だけ。店を狭くしたのはお客さんとの距離を縮めるため。お客さんとの仕事のトークはときには人生や恋愛の相談になることも。

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菊池 保宏(きくち・やすひろ):
1980年、一関市生まれ。父が転勤族で数年おきに岩手県内を移り住む。専門学校を卒業後、出版社に勤務。その後、県内のホテルや時計宝飾販売店での仕事を経て、2014年に文房具のセレクトショップpen.を盛岡市菜園にオープン。一般社団法人日本地域色協会監事。

セレクトショップpen.:
主に万年筆やボールペンなどの高級筆記具の販売のほか、岩手県の特色を活かした浄法寺産漆塗りのオリジナルボールペンや岩手県内の特徴的な色を活かした万年筆インクなどの企画販売もしている。

\菊池さんの言葉を聞いた、参加者のコメント/

・自由な生き方をしている方でとても楽しそうだなと思いました。なんだか気持ちがスーっと楽になりました。好きなことをしてもいいんだなと思えた時間でした。

・自分と真反対のような決断の仕方をする方でとても興味深かった。いろいろそのときの状況はあるけれど、本当にやりたいことをするのが一番良いと思った。

・しんどさと楽しさを考えたとき、楽しさが勝るならやるというのが今の自分にとても響きました。在職中は、楽しいばかりではないけれど楽しむという気持ちがあったとき一番うまくいっていたなぁと思い出しました。その気持ちを大切にしながら求職活動をしていこうと思います。


「しごとトークカフェ」は2010(平成22)年度にスタート。菊池さんは141人目のゲストでした。