シゴトビトの言葉学
[第36講] 株式会社ホームセンター/株式会社斎藤商事 代表取締役社長 齊藤 健吾のコトバ
毎月1回開催の「しごとトークカフェ」。そこで社会人のゲストが語る、働き方、暮らし方、生き方とは?岩手で働く社会人たちからのメッセージを「シゴトビトの言葉学」として紹介します。
肴町商店街振興組合青年部は、さ行が続く頭文字から「肴町4S会」と呼ばれる。会員は50法人68人。「ベンチプロジェクト」や「子どもフェス」「ハローウイーン仮装コンテスト」など面白イベントを仕掛け、実働部隊となる。会員から集める会費で運営し、自分たちが「面白い、楽しい」と思うことに取り組んできた。10月の毎週土曜日には「みんなの遊び場」を開催。子どもたちが各店の目玉商品の看板作りやシャッターアートに挑戦した。「売り上げにつなげたいとか客足を伸ばそうとは思っていない。もっと面白いこと楽しいことで“地域の力”を上げ、自分の子どもにも胸を張れる街にしたい」
お客さま一人一人に寄り添って
入口の自動ドアが開きお客さまが入って来ると、袋から物を取り出し「これねべが?」。そこからマンツーマンの商売が始まる。使い方を説明しお客さんに合う商品を選び「じゃ大丈夫ですね」と確認する。商品によっては自宅まで配達し、設置して使用後のフォローもする。「こんなことは全国チェーンの小売店ではできない」。大きな病院とバスセンターが近くにある肴町商店街の主な購買層はお年寄りだ。宮古から通院し、ついでにアーケード街で買い物をする常連客もいる。
日曜大工スペース「KITENE」
ホームセンター2階にオープンした日曜大工(DIY)スペース「KITENE」。KIは木工の木、TEは手作業、NEは「根」から。「この街に根を張ってやっていこう」という覚悟の気持ちを込めた。工具を使うためのレッスンをしたり、工作の作業場として使ってもらったり、会合場所になったり。KITENEは「ひょうたんから駒」だった。空き店舗が増えた2017年、4S会が店の前に木製ベンチを置いて、お客さんの“見える化”を目指した。市産材を使ったベンチは好評でお年寄りらの語らいの場に。開業したいという人はその光景を見て一歩を踏み出すことを狙った。ベンチは当初、滝沢市の工務店で作っていたが、余裕があるホームセンター2階が作業場になった。
ヒット商品も生まれる
「KITENE」はヒット商品も生み出している。一つは「消音太鼓」。さんさ踊りに必須のアイテムは、大きな音が出るため自宅などでは練習しにくいもの。消音の練習用太鼓を市内のジムと共同開発し、大好評だ。もう一つは、コロナ対策の飛沫(ひまつ)感染予防板「ついったーて」。オーダーメイドもでき、人気上昇中だ。いずれも知り合いから依頼を受け、生まれた。「頼まれたことは断らない」。「諾」の姿勢でこれからも挑戦を続ける。
齊藤 健吾さん(さいとう・けんご):
盛岡市生まれ、37歳。杜陵小、下橋中、岩手高卒。千葉経済大経済学部を卒業後、OA機器の営業を経て2012年(株)斎藤商事入り。翌年(株)ホームセンターに出向。2016年に父裕保さんの逝去にともない両社の代表に。肴町商店街振興組合の役員で週末、アーケード街でイベントを開催している。
ホームセンター:
1944年創業の斎藤金物店が前身。同店の小売部が1968(昭和43)年に株式会社ホームセンターになった。ホームセンターの名前が国内で会社名となったのは同社が初めて。2018年センター2階に日曜大工スペース「KITENE」を開設した。
\齊藤さんの言葉を聞いた、参加者のコメント/
・地域に根付いた企業が街を盛り上げるためにさまざまな取り組みをしていることや仕事のなかで工夫を凝らして新しい活動に着手するリスクとリターンを聞くことができ参考になりました。
・面白いことしかしないというくくりや、わが子に胸を張れる町にするというプライド。声を掛けてもらうため何でも引き受ける姿勢と興味深い話が多かったです。
・前職で厳しい経験をするなどプラスの話題ばかりではないはずなのにすべてが前向きでエネルギッシュ、そしてドラマチックにお話していただき、希望を感じました。
「しごとトークカフェ」は2010(平成22)年度にスタート。齊藤さんは135人目のゲストでした。
過去の様子はジョブカフェいわての施設内に常設のDVDで閲覧できます。