SYU-KATSU SPICES就活に役立つ話題集

シゴトビトの言葉学

[第34講] うみやまのあいだ あめつちのからだ代表 二宮 彩乃のコトバ

毎月1回開催の「しごとトークカフェ」。そこで社会人のゲストが語る、働き方、暮らし方、生き方とは?岩手で働く社会人たちからのメッセージを「シゴトビトの言葉学」として紹介します。
34-titleおままごとやお医者さんごっこ、電車ごっこなどごっこ遊びを取り入れ、体験型コンテンツのワークショップを開いてきた。「本を読み、穴埋め問題を解いただけでは理解は浅い。それより体験をすることで学びが深まる」。当日会場の参加者10人に「みなさんが一緒に住み全員が満足できる家をつくってください」と問いかけた。年齢性別もさまざまで初対面の方も多く、話がなかなか進まないのを見計らい「では4人はオオカミ、もう4人はネズミ、そして2人をウサギにします」。二宮が「gocco(ごっこ)ツール」と名付けた手法は、リアルの壁を乗り越え互いのコミュニケーションを活性化し、発想を柔軟にする。

オペラ座の観劇が転機に

フランスなどで活躍した叔母で染色作家・ファッションデザイナー二宮柊子さんの手伝いがしたいと大学は仏文科を選んだ。20歳になり、周囲が就活を始めるなか「自分は何がやりたいのかわからなかった」とパリに短期留学し、オペラ座の演劇を見て「これをやろう」と決める。社会芸術としての演劇を学び、卒業後は演劇を体で理解しようと2年間研修所に通った。東京を拠点に全国各地で演劇活動を続けていた。そんなころ東日本大震災が発生し、地方でアートの力が見直される動きが広がった。東京中心の活動に疑問を持つようになり、小中学時代を過ごした一関市に拠点を移した。

中学校で演劇教育

故郷に戻ると中学校の先生から声がかかり、演劇のワークショップを主宰した。台本づくりから公演まで3年かけ、学業ではあまり認められていない生徒が役割を与えられると生き生きとした発想力をみせ、驚くような集中力で創作活動に取り組んだ。「勉強だけでなく別の評価軸があると子どもたちは変わる」。そんな実感を先生と共有した。もう一つの取り組みは伝統芸能。市井の人たちが舞う神楽、その所作や動作の質の高さに圧倒された。「演劇経験が生きる」と直感し、体験教室などを開いて芸能の継承を支援した。

人が集まらないとできないこと

新型コロナウイルスの影響で活動が制限されている。オンライン化が進み「人が集まらなくてもできる」という発見はあった。でも「集まらないとできないこともある」ともう一歩踏み出したい気持ちが強い。AI(人口知能)の時代に「自分の知恵と他者の知恵を使って未来のことを決める」。そんな可能性に希望を見出している。
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二宮 彩乃(にのみや・あやの):
盛岡市出身。小中を一関市で過ごす。青山学院大文学部フランス文学科でフランス演劇史、演劇学ゼミを専攻し、2010年に卒業。座・高円寺劇場創造アカデミー演出コースを終え、演劇ユニット脇泥の主宰演出家、富山県や福岡県などで演劇活動を続け、2014年に一関市に「いちのせきのはこ・ガレージホール」をオープンし支配人に。中学での演劇教育、サステナブル・スリランカなどの活動を経て2018年に「うみやまのあいだ、あめつちのからだ」を立ち上げた。2020年1月に絵本「ひとひと」を出版した。

\二宮さんの言葉を聞いた、参加者のコメント/

・規模の大きな話を身近なものに例えて考えてみるという発想が面白いと思った。自分が知らない生き方で、視野を広げることができた。
・自分の経験のない仕事、環境について知る良い機会となりました。集団や組織のなかでも活きる考え方だったので、今後の生活や仕事の中で参考にしていきたい。
・「問いかけは公平」という言葉が印象に残りました。体験を言葉として着地させるというかかわりについてもっとお聞きしたいと興味を持ちました。考えること、感じることの種をいただいたように思います。


「しごとトークカフェ」は2010(平成22)年度にスタート。二宮さんは129人目のゲストでした。
過去の様子はジョブカフェいわての施設内に常設のDVDで閲覧できます。