シゴトビトの言葉学
[第29講] 株式会社川徳 営業三部 部長代理、劇団ゼミナール主宰 斎藤英樹のコトバ
毎月1回開催の「しごとトークカフェ」。そこで社会人のゲストが語る、働き方、暮らし方、生き方とは?岩手で働く社会人たちからのメッセージを「シゴトビトの言葉学」として紹介します。
高校時代、友人から誘われ入った演劇部。最初は大道具など裏方だったが、人が足りず役が回ってきた。小さいころからテレビドラマの出演者のまねが得意で「役者にもちょっと自信が」。取り調べを受ける犯人を演じ、仲間から絶賛される。「舞台は気持ちいい。これはやめられない」とすっかりとりこに。大学浪人の予備校時代、友人と劇団を立ち上げ劇団名には予備校の名前を拝借。以来劇団とともに30年活動を続けている。当初からプロの役者になることは念頭になく、盛岡で仕事をしながら、都会からも人が呼べる劇団を志した。職場でもステージでも目指すものは同じ。「笑顔あふれる空間に」
原点は婦人服売り場
最初の配属は婦人服売り場。ミセス層が顧客で、新人時代は商品知識もなく「いらっしゃいませ」と声を出すのが精いっぱい。先輩から「ほら、行きなさい」と背中を押され、ご婦人方とのやり取りでセールストークを鍛えた。婦人服には興味がなかったが、ワゴンに商品を何点並べれば美しく見えるかなど、小さなことでも好きだったり得意だったりすることをしながらモチベーションを維持した。結局、婦人服売り場には合せて十数年勤務した。
売り物は夢
お客さんのニーズが多様化し、それに合わせるように流通チャンネルや店舗も多様化している。全国のデパートの総売り上げが6兆円ちょっと。一方ネット販売は14兆円を超える。でもネット購買するかどうか迷う消費者も少なくない。「リアルショップは店頭に来ていただいて買っていただく。そのための接客や販売のトーク、知識を高めなければ」と危機感を持つ。自身は社内でも数少ない1級販売士だ。「エレベーターガールを復活してほしい」という参加者からの要望に「百貨店も劇場も日常と違う夢のある空間が魅力」と共感する。
仕事と趣味
営業企画部時代は地元テレビの番組にレギュラー出演した。演劇で培った話術でタレントと間違えられたことも。演劇は社内プレゼン、対外交渉でも役に立ち「座長の仕事はメンバーと組織の在り方の勉強だった」。15人の団員はみな仕事をしながら演劇を続けている。公演の半年前から脚本書きが始まり、けいこは3カ月前ぐらいから。午後8時過ぎから約1時間半、集中してけいこする。仕事帰りのけいこは体力的に年々厳しくなっている。でも「仕事の失敗はここで吹き飛ぶし、切り換えにもなる」。仕事も趣味も全力投球。「盛岡を“楽しい街”にしたい」と演劇活動を続ける。
株式会社川徳:
盛岡市菜園のデパート「パルクアベニュー・カワトク」が本店。ほかに6店舗ある。幕末時代の木綿商が始まりの県内屈指の老舗百貨店。2018年度の年商は約210億円。
斎藤 英樹(さいとう・ひでき):
盛岡市生まれ、盛岡第四高校、白鷗大学卒。1994年に(株)川徳入社。営業企画部などを経て2018年から現職。演劇では、初代もりげき王、盛岡市民演劇賞を多数受賞。コメディーを得意とする劇団ゼミナールを主宰している。
\斎藤さんの言葉を聞いた、参加者のコメント/
・仕事と演劇を両立しているそのエネルギーの秘訣を知りたいと思い、参加しました。現在求職中ですが、「自分の好きなことを大切にしてそこで役立つことを見つけると良い」という言葉が響きました。もう一度自分の軸を見つめて就活に生かしていきたいと思います。
・趣味と仕事を両立することは改めて大事だと考えさせられました。自分でもやれるようになりたいと思いました。
・まず、するべきことである仕事をしっかりとする。そして、趣味を大事にできるようになることが大切であることが分かりました。趣味は自分をリフレッシュさせるものであると同時に、趣味から得られたものを仕事に生かせるという。仕事⇔趣味の双方の行き来を上手にすると良いということが分かりました。
「しごとトークカフェ」は2010(平成22)年度にスタート。斎藤さんは124人目のゲストでした。
過去の様子はジョブカフェいわての施設内に常設のDVDで閲覧できます。