シゴトビトの言葉学
[第27講] 株式会社岩手ビッグブルズ代表取締役社長 水野哲志のコトバ
毎月1回開催の「しごとトークカフェ」。そこで社会人のゲストが語る、働き方、暮らし方、生き方とは?岩手で働く社会人たちからのメッセージを「シゴトビトの言葉学」として紹介します。
地元紙の運動部でスポーツを取材していた記者は、岩手のプロバスケットボールチームを運営する会社に入り、取材される側に。「スポーツが地域にもたらすのは経済効果だけではなく、県のイメージを高め市民を勇気づける。スポーツの力を信じてビッグブルズを持続的に発展させたい」。そんな目標を公表し、自ら営業活動にも奔走。スポンサー数は前年の3倍に、ファンクラブも倍増し、4期ぶりの黒字を達成した。
転機は台風10号
大船渡市で生まれ、小中高は盛岡市。日本大学経済学部を卒業し、地元紙の記者になった。同期10人の中から選ばれ、警察担当に。朝の警察署回りから夜は警察官との飲み会、サイレンの音を聞けば必ず現場にという新人時代を送り、二戸支局を経て運動部へ。同部の取材はスポーツ好きにたまらないほど楽しく、充実した日々を送っていた。そんなとき、2016年8月に岩泉町で多くの犠牲者を出す台風被害が発生し、応援に向かう。現場では全国紙の記者らとのモラルなき取材競争に巻き込まれる。「これは自分の価値観とは違うな」。悩んでいた時期にビッグブルズから誘いを受けた。
華やかな表舞台を支える
プロスポーツの現場には日々の興奮も夢もあり、それを支える充実感もある。一方で、華やかな表舞台とは対極の現実もある。社長として一番いやな仕事は選手交渉。「1、2年間一緒に戦った選手に『明日からは来なくていい』と伝えるのは本当に辛い」。「もしプロスポーツに関わる仕事を希望するなら、1、2カ月の就労体験をした上で決めてほしい」。社員は6人。担当はあるものの自分も含めみんなでなんでもやる。これからも「社員を一番大切に」考え、営業成績を挙げ、チームを強化する。
変わることで成長を続ける
今年のチームのスローガンは「Change」。会社もチームも上向きだが、そんなときにこそ「変わっていこう」「変わらないといけない」と言っている。地元のファンを一人でも増やすため、入場無料の試合を開催したり、子どもたちやお年寄りを招待したり。震災復興の一助にと沿岸部で試合をし、幼稚園や学校を巡りバスケクリニックを開く。さまざまなアイデア試しならが「変わることで会社もチームも成長できる」
岩手ビッグブルズ:
岩手県を本拠地にするプロバスケットボールチーム。2011年にbjリーグに加盟した。現在はリーグ3部(B3)に所属。広い県土を表す「ビッグ」といわて牛の産地から雄牛の意味の「ブル」から名づけられた。
水野 哲志(みずの・さとし):
大船渡市出身、盛岡一高、日本大学卒業後、(株)岩手日報社に入社。編集局運動部記者などを経て2016年に(株)岩手ビッグブルズの前身(株)岩手スポーツプロモーション入社。2017年に同社取締役、2018年5月から同社代表取締役社長。
\水野さんの言葉を聞いた、参加者のコメント/
・私は持病があり体力に自信がない中、仕事を探しています。本日の話を聴いてあたりまえですがみんな頑張っているんだとわかりました。自分も頑張ろうと思いました。
・人の経歴や人生を聞く機会はありそうでそう多くないと思います。今日は社長職に就いている方で、トップになれば会社を良くするためにいろいろ考えるものなのだと聞き入りました。
・「社長」という役職の意外な面が知れて良かった。人を切ることをさけられないので、そこはとても苦しいのだなと感じた。「人脈」を広げるという大切さも知ることができ、今から周りの人を大切にしていきたいと思った。
「しごとトークカフェ」は2010(平成22)年度にスタート。水野さんは122人目のゲストでした。
過去の様子はジョブカフェいわての施設内に常設のDVDで閲覧できます。