SYU-KATSU SPICES就活に役立つ話題集

シゴトビトの言葉学

[第25講] IT関連企業に勤めながら本屋を運営 小山由香理のコトバ

毎月1回開催の「しごとトークカフェ」。そこで社会人のゲストが語る、働き方、暮らし方、生き方とは?岩手で働く社会人たちからのメッセージを「シゴトビトの言葉学」として紹介します。25-title
絵本好きだった幼児が「本屋さんになりたい」と母親に打ち明けた。「それは無理、簡単にはなれない。本屋さんと結婚しないとだめ」。世の中の仕組みはそういうもの。やりたいことがあってもやれない。自分の夢にふたを閉め心の奥にしまい込んだ少女は30代半ばになり忘れかけた夢を思い出す。きっかけはソチ五輪閉会式。ロシアの文豪を紹介するパフォーマンスで、子どもたちが入ったのは本が積み重なった図書館。印刷工にふんしたパフォーマーが紙を撒くとページの紙吹雪が天高く舞った。

新しい世界と出会う場

親を恨んでもしょうがないし、このまま生きておばあちゃんになってしまうのはいや。自分の夢にチャレンジすることを決める。横浜市で開かれた「これからの本屋講座」に参加。古本販売を中心とした本屋にプラスアルファを加え開業を目指す。起業セミナーで勉強し、銀行と融資の相談をし、飲食を提供するため食品衛生管理者の資格も取った。仕事で疲れた自分を再生してくれたのは街の本屋。時間を忘れて過ごし、自分の知らない世界との出会いが癒やしになった。本屋のプラスアルファはワークスペースやイベント会場の提供とし、人と人の出会いの場も目指した。本屋ではプロレスバーや坊主バー、文具カフェやデザイン講座などを開いている。

履歴書に書けないぐらいの転職

高卒後、歯科衛生士の専門学校に。何軒か歯科医院に勤めたものの「ほかにできることがあるのでは」と派遣の契約社員に。県庁、市役所の臨時職員、イベントスタッフ、コンパニオンなどさまざまな仕事を経験した。しかし正社員にはなかなかなれず、収入も増えない。ようやく今の会社に入り落ち着いた。当初は派遣社員。積極的に手を挙げ正規雇用の人と同様の業務をこなし、自費で外部の研修に参加するなど自分の得意分野に磨きをかけ、3年前に正社員に。

自分への投資

「苦労はしたが、自分の夢が形になったのはこれまでの人生で最大の喜び」。お金を貯める余裕はなかったので融資を受けた。本屋の経営には本業の報酬を充てているが、個人事業主になって初めて会社のすごさも知った。人との出会いがあり、好きなことをしていることがエネルギーとなり仕事にも生かされる。フラダンスが趣味で年に1回ハワイに行く。店名の「ポノ」はハワイ語。「地球上の全てのものがそこにあっていいこと」。居心地のいい本屋は「すべてを肯定するコンセプト」から生まれた。

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ポノブックス(pono books&time):
営業は平日の夕方や土日で、古書や新刊書などを販売するほか飲み物も提供し、利用者は本を読みながらくつろぐことができる。トークイベントやワークショップ会場としての貸し出しもしている。

小山 由香理(おやま・ゆかり):
盛岡市出身。盛岡二高、県立衛生学院歯科衛生学科卒。盛岡市内のIT関連企業で正社員として働きながら2017年3月、本とコーヒーとワークスペースのある本屋「Pono books&time」を盛岡市大通3丁目にオープンした。

\小山さんの言葉を聞いた、参加者のコメント/

・ちょうど、夢をあきらめた方が良いのかなと思い悩んでいた時期でした。話を聞きながら、すごく沢山悩んであがいて進んでいけるのだなあと感じました。

・私は将来の夢を決めたのが最近ということもあり、急いで将来の夢を考えてつくる必要がないことをあらためて思いました。「自分に投資をする」ことは、これからの自分に必要なことだなと思いました。

・就職活動する中で、自分のやりたいことと収入面などの条件や仕事という意味で両立できないと悩んでいましたが、仕事とやりたいことを二つとも叶えている姿に感動しました。

 


「しごとトークカフェ」は2010(平成22)年度にスタート。小山さんは120人目のゲストでした。
過去の様子はジョブカフェいわての施設内に常設のDVDで閲覧できます。