SYU-KATSU SPICES就活に役立つ話題集

シゴトビトの言葉学

[第22講] 奥州市国際交流協会職員 黒石寺住職 藤波大吾のコトバ

毎月1回開催の「しごとトークカフェ」。そこで社会人のゲストが語る、働き方、暮らし方、生き方とは?岩手で働く社会人たちからのメッセージを「シゴトビトの言葉学」として紹介します。
22-title高校2年生のとき、進学先を決めるため自分の仕事をイメージしてみた。「なんとなく教える仕事。でも学校ではない」。職業紹介の本をめくると「日本語教師」に出会った。外国語大学に進学し、日本課程日本語専攻に。海外の日本語学校で教師ができる技量を得るため英国の大学院で実践力を磨いた。「アフリカに住みたい」。そんな動機で西アフリカ・ベナン共和国の「たけし日本語学校」で日本語教師となった。「何をしたいのか、どうあるべきか」を考え、人生の岐路で選択をしてきた。

文化の違いを楽しもう

ベナン共和国から帰国し、地元奥州市の国際交流協会に職を得る。同協会の主な目的は「外国人が住みやすいように」サポートする。病院や生活相談などの場に通訳を派遣したり、日本語を教えたり、市の広報を翻訳するなどしている。公立病院に派遣できる通訳は英語、中国語、韓国語、タガログ語の4言語で約30人いる。ほかに市民と外国人をつなぐイベントや企業に出向き技能実習生に日本語を教えたりしている。アフリカでの経験を「ベナン人とは一生分かり合えないと思った」と振り返る。「背景に文化の違いもあるのですれ違いも楽しみながら」と異文化共生を語る。

蘇民祭は宗教行事、祈りの場

住職を務める黒石寺は約1300年の歴史がある東北の古刹。旧正月に行われる蘇民祭は日本三大奇祭の一つだ。寺に生まれた藤波はこの祭りとともに育った。祭りの核となるお寺と檀家は蘇民祭の前後10日間は肉や魚、卵、香りが強いニラなども食べないで精進する。祭りの中心行事は全国から集まった約100人の男衆による蘇民袋争奪戦だが、その前にいくつかの儀式がある。「日々のストレスや悩みを持っている人々が集まり、それを祭りの場で集めて上に上げる」

意外に小さいことが自分の喜びかもしれない

就職活動中の方に送る言葉は「何をやりたいか、やりたくないかを考え、自分のために時間を使うこと」。自己分析で大事なのは小さな気づき。「自分が喜ぶことは小さいことかも知れない。意外に気づいていないことが多い。一個ずつ気づいていくこと、そして好き嫌いを大事にして、自分にしっかり向き合ってもらいたい」とアドバイスする。
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奥州市国際交流協会:
奥州市水沢字吉小路38-3、会長佐藤剛(株)水沢農薬代表取締役、医療通訳派遣システム、外国人就労支援事業、日本語教室(外国人対象)、外国人ママふれあいサークル、語学教室(中国語、英語)、国際交流イベントの開催、地域のお祭りの参加などをしている。

黒石寺:
平安時代初期の在銘像、木造薬師如来坐像(重要文化財)や選択無形民俗文化財の蘇民祭で知られる。蘇民祭は岩手県を中心に各地に伝わる裸祭り。千年以上の歴史があるといわれる。蘇民祭は災厄消除・五穀豊穣を祈願する日本三大奇祭、日本三大裸祭りの一つ。

藤波大吾(ふじなみ・だいご):
奥州市水沢出身。東京外国語大学卒業後、英国グリニッジ大学大学院へ。同大学院修了後、西アフリカ・ベナン共和国で2年間「たけし日本語学校」で教師をする。2011(平成23)年9月から奥州市国際交流協会職員。

\藤波さんの言葉を聞いた、参加者のコメント/

・ご自身の“好き”“やりたいこと”を実行、実現されているのが、素直に素晴らしいと感じました。こういったことを出来ない人が多いと思うので、尊敬します。とても勇気をもらえました。
・仕事は生活するために必要なことではあるけれど「自分が何をしたいか、したくないか」を叶えるための手段でもあるという風に思えました。「自分のあり方」「自分に時間を費やすこと」をもっと大切にしていきたいと思いました。
・肩書きや経歴など自分とは遠い世界の方なのかと思い話を聞いていましたが、良い意味で裏切られました。日本を離れて生活したことで日本にいながらでは気付けないことなどを気付けたのかと思いました。私自身がこれからのことについて改めて考え直すきっかけが出来てよかったです。

 


「しごとトークカフェ」は2010(平成22)年度にスタート。藤波さんは118人目のゲストでした。
過去の様子はジョブカフェいわての施設内に常設のDVDで閲覧できます。