シゴトビトの言葉学
[第20講] 岩手県立盛岡みたけ支援学校高等部 講師 佐藤奈津子のコトバ
毎月1回開催の「しごとトークカフェ」。そこで社会人のゲストが語る、働き方、暮らし方、生き方とは?岩手で働く社会人たちからのメッセージを「シゴトビトの言葉学」として紹介します。
シングルマザーとして子育てしながら、日本海に浮かぶ離島、島根県の海士町や山口県の周防大島、祝島で暮らした。振り返るとアルバイトを含め約40の仕事を経験している。「人も好きだし話すことも好き、そして自然も好き」。そんなことやこれまでの経験を一つにたばねるような仕事をしたい。「引き出しは支援学校の仕事は向いていると思う。でも、もっと向く仕事もあるのでは」。「旅する人生」はまだまだ未完だ。
沖縄通いで地元を見つめ直す
岩手県南部に生まれ、小中高とソフトボールに明け暮れた。大学は日本女子体育大へ。4年生の夏休み、アルバイトでためたお金で沖縄へ。音楽など芸術が溶け込んでいる島の暮らしに魅了され、卒業後も幼稚園に勤めながら何度も訪問した。そんな中、奄美大島の住民の歌を聞き「自分の歌は地元の人にはかなわない」という思いと「自分は岩手のことを何もしらない」という思いが交錯し、帰郷を決めた。
震災を機に離島へ
岩手に戻り、工房での芸術活動や「森のようちえん」の運営などをしていたとき、東日本大震災に遭った。しばらく救援活動をしていたが、小さい子どもの健康を考え、知人を頼りに海士町に移住することに。Iターン受け入れで全国的に有名な島で、隣のおばあちゃんが子どもの誕生日にごちそうを届けてくれるなど住みやすい島だった。ただ、断崖絶壁の孤島暮らしは、山里で生まれ育った自分には耐えられず、里山文化が残る周防大島に。その後、児童がいなくなり廃校間近な小学校がある近隣の島、祝島に誘われ、学齢期の子どもと一緒に移り住んだ。
支援学校での日常
県内の支援学校は入学を希望する児童生徒が増え、先生、教室とも不足している。みたけ支援高等部は生徒の自立、社会参加を目指す。座学はなく、着替えなどの日常生活に必要なことと、手に職をつけるため木工や園芸、紙のリサイクルなどの実習が授業だ。朝恒例のランニング、これまでグラウンドに出たことがなかった生徒が初めて出てくれた。「教育の成果はすぐには出ない」。子どもたちのそんな一歩が先生のやりがいだ。
盛岡みたけ支援学校:
知的障がいの児童生徒が通学する。 小学部21学級、中学部8学級、高等部17学級の計46クラス。児童生徒235人(2018年11月時点)。児童生徒の増加に伴い2019年度盛岡市手代森に盛岡ひがし支援学校が開校する。
佐藤 奈津子(さとう・なつこ):
大東高、日本女子体育大卒。 張り子工房、森のようちえんなどで活動。震災救援活動の後、2011年島根県隠岐郡海士町に。その後山口県周防大島町、上関町祝島で暮らし地域おこしなどに従事。2016年4月から現職。1児の母。
\佐藤さんの言葉を聞いた、参加者のコメント/
・こんな人が岩手にいるのか、しごとトークカフェのゲストとして来られたのかと驚いた。ご自身もジョブカフェいわてに相談に来たというような話まで正直に語ってくださり、親近感がわいた。この人も生きているんだなぁと。
・現在悩んでいる中、参加させていただきました。活き活きと話される姿に私もどんどん活動しなければ!と思いました。
・以前、ボランティアでみたけ支援学校にお邪魔したことがあります。お話を伺って人生、何が起こるかわからないと思いました。いろいろな経験をして、今があるとおっしゃっていたので勇気がでました。
・自分の本来したい生活をしていて素敵な人生だなと思った。人生で無駄になることはないんだと感じた。
「しごとトークカフェ」は2010(平成22)年度にスタート。佐藤さんは113人目のゲストでした。
過去の様子はジョブカフェいわての施設内に常設のDVDで閲覧できます。