シゴトビトの言葉学
[第18講] NPO法人いわてGINGA-NET 代表八重樫綾子のコトバ
毎月1回開催の「しごとトークカフェ」。そこで社会人のゲストが語る、働き方、暮らし方、生き方とは?岩手で働く社会人たちからのメッセージを「シゴトビトの言葉学」として紹介します。
「何となく」で選んだ大学。「社会福祉学部に入ったのだから、ボランティアにでも挑戦してみよう」と、開設されたばかりの岩手県立大学学生ボランティアセンターに参加した。最初の支援は中越・中越沖地震の新潟県で。仮設から復興公営住宅への移行期に被災者に寄り添った。同センターは、緊急時だけでなく日常的に地域とつながる大切さを実践しようと、学生だけでなく教員職員も参加し鍋を囲んで住民と懇親を深める「DoNabe net(土鍋ネット)」始めた。このプロジェクトの代表となり八重樫は、地域との関わることの意味を考え、企画力、コミュニケーション力、交渉力を身につける。
震災がなければ…
大学3年の春休み、東日本大震災が発生した。釜石市の災害ボランティアセンターを拠点に、全国各地、海外からも来るボランティアの連絡調整をした。炊き出し支援提供者と避難所とのマッチング業務を担当。夏休みには阪神大震災を経験した神戸や京都のNPOから資金、ノウハウの提供を受け、最大時約200人に上った全国から集まった学生ボランティアをコーディネートした。体育館に雑魚寝する支援活動は約2カ月続く。「東日本大震災がなかったら今の道には進まなかったかも」
支援から体験学習に
震災から間もなく8年となり、活動は大きく変化した。今は復興支援ではなく、学生が地域とのかかわりを体験できるプログラムを提供する。学生たちは沿岸部に行ってカキ漁師の手伝いをし、内陸部で農業に従事し、養鶏を体験し、農家などに泊まりながら敬老会の手助けや祭りの山車も引く。参加者の動機はさまざま。「これまで地域との関わりは全然なかった」「復興状況を知りたい」「震災支援の恩返しを」。そんな学生たちを応援するのが仕事だ。
「やりたい」を形にできる
NPOはやろうと思ってやったのではない。「今の活動を続けていくためには仕事としてやらないと」。正直不安もあった。周囲にNPO関係者もいて「目の前のものに挑戦した感じ」という。企業はお客さんから商品の対価をいただく。NPOは対象の地域住民からではなく、賛同し応援してくれる人から対価をもらう。方向が違うだけで企業の取り組みと大きく変わることはない。違いは、会社では与えられた仕事をやるが、NPOでは「自分がやりたいこと」を形にできる。成果や結果が出ればそれは大きな喜びになる。
NPO法人いわてGINGA-NET:
若者が自ら生活する地域に問題意識を抱き、その解決に目を向ける。それをきっかけに地域貢献活動をし、発信することを目指す。活動分野は保健・医療・福祉、社会教育、まちづくり、災害救援、子どもの健全育成など。
八重樫 綾子(やえがし・あやこ):
1989年、盛岡市生まれ。岩手県立大社会福祉学部卒。2012年2月、特定非営利活動法人いわてGINGA-NETを設立。岩手県の学生ボランティアネットワーク構築や人材養成に取り組む。県立大いわて創造教育コーディネーター。
\八重樫さんの言葉を聞いた、参加者のコメント/
・ボランテァ活動を通して地域に貢献していく姿に感動しました。NPOの方のお話をじっくり伺うという経験が初めてのことだったので、いろいろなお話を伺えてとても貴重な時間を過ごさせていただきました。
・NPO法人の仕事に興味があったので、お話を聞くことができてよかったです。一般企業にいると見えにくい部分で、参考になりました。同じ世代の方がどう働いているかが分かり、私も頑張らなければと思いました。
「しごとトークカフェ」は2010(平成22)年度にスタート。八重樫さんは114人目のゲストでした。
過去の様子はジョブカフェいわての施設内に常設のDVDで閲覧できます。