シゴトビトの言葉学
[第17講] 株式会社遠野醸造 代表取締役 袴田大輔のコトバ
毎月1回開催の「しごとトークカフェ」。そこで社会人のゲストが語る、働き方、暮らし方、生き方とは?岩手で働く社会人たちからのメッセージを「シゴトビトの言葉学」として紹介します。
休み時間にも教科書を開いていた真面目な高校生は、大学入学後自分が何をやりたいのか分からなくなった。学校には行かずバイト先とスーパーとアパートを行き来する日々を送っていた。「このままではだめだ」。大学を2年間休学して世界一周の旅にでた。約30カ国を回る中で、各地で地域に根差したクラフトビールに出合い、旅のサブテーマになった。
新卒で大手アパレル店店長に
海外で出合ったもう一つのものは、日本ならではのサービスと品質だった。大学卒業後は、海外にも店舗を展開する日本の大手アパレルメーカーに。九州で店舗のマネージメントや新店舗の立ち上げ、そして店長として仕事をした。店長は中小企業の経営者と同じだった。採用から労務、売り上げ管理まで120人のスタッフを抱え、月商何億の店舗運営はやりがいもあった。でも「何かが違う」。生産者の顔も消費者の顔も見えない大量生産大量消費のシステムに空しさも感じていた。
自分で造ったビールを自分の手でお客さまに
「別の仕事」を考えたときに浮かんだのは、クラフトビール。地球を歩いて感じたその自由さと土地との結びつきだった。商売ではあるものの、自分の手で醸造したビールを店のカウンターに座ったお客さんに手渡しする。そんな差し向かいのコミュニケーションは自分がやりたいこと。横浜市のブルワリー会社に勤めた後、遠野市の「ビールプロジェクト」の募集を知り、ためらわずに応募。今まで一度も行ったことがない土地への移住を決めた。
ブルワリーを核に地域資源を生かす
「自分で考え、自分で決めて実行する。辛いこともあるが、本気でやるとビジネスにはなる」。大手アパレル会社では、仕事は上司に言われ、マニュアルにあるからやるものだった。自分の色は消して会社の色に染まる。そうではなくて自分の生活も大切にしながら、仕事を楽しんでやる。「そんな姿勢は消費者にも間違いなく伝わる」。袴田が遠野で確信したことだ。
株式会社遠野醸造:
遠野市中央通り10-15。2018年5月ブルワリーパブ「遠野醸造 TAPROOM」開店。豊かな水源と半世紀のホップ栽培の歴史がある遠野で醸造家・生産者・住民が知識やアイディアを共有した開かれたビール造りをし、新しいビール文化が育ち、開花することを目指している。
袴田 大輔(はかまだ・だいすけ):
1988年生まれ。青森市出身。筑波大卒業後、大手アパレル企業に就職。横浜市のクラフトビールメーカーを経て、2016年9月から遠野市の起業を支援するプロジェクト「遠野ローカルベンチャー」のビール醸造家育成プログラムに参加。2017年4月遠野市に移住。同年11月に株式会社遠野醸造を設立した。
\袴田さんの言葉を聞いた、参加者のコメント/
・上からの指示やマニュアルに従う働き方ではなく、自分自身の意思と責任とポジティブ(仕事を楽しむ)な気持ちを持って動く仕事の仕方はとても尊敬できた。自分もこんな風にアクティブな仕事の仕方が出来れば、いろいろやってみたいことにもチャレンジしていけるんだろうなと思いました。
・事業内容、自分史、日々の仕事、将来の展望を分かりやすく話していただき興味が持てた。特にこれまでの経歴の話は興味深く聞くことができた。
・起業家の方の話が生で聞けて本当に良かったです。エネルギーをもらいました。
・起業や新しい事への挑戦する決断が素晴らしいと思いました。
・とても面白くて時間がたつのがあっという間でした。
「しごとトークカフェ」は2010(平成22)年度にスタート。袴田さんは112人目のゲストでした。
過去の様子はジョブカフェいわての施設内に常設のDVDで閲覧できます。