SYU-KATSU SPICES就活に役立つ話題集

シゴトビトの言葉学

[第9講]酪農家(菅原牧場) 藤田春恵のコトバ

毎月1回開催の「しごとトークカフェ」。そこで社会人のゲストが語る、働き方、暮らし方、生き方とは?岩手で働く社会人たちからのメッセージを「シゴトビトの言葉学」として紹介します。

09-title西和賀町で両親が始めた牧場で生まれ、育つ。赤ちゃんのころから牛舎が遊び場で牛がいる生活が当たり前。子牛にミルクを与え、乳牛に餌をやり、搾乳し、牛舎を清掃、出産に立ち会い、乳牛としての役目を終えた牛は肉用として出荷する。そんな酪農家の暮らしを「命をつなぐ過程で出てくるものをいただいている」と表現する。

父親と同じ道を歩く

農家ではない一般家庭で育った父親は東京農業大学で酪農に出会い、三十数年前に西和賀で独立した。牧場開業の年、藤田は生まれる。藤田は盛岡の高校を卒業後、父親の後を追うように東京農大に進学。米国で農業研修をし、帰国して両親の牧場で働き始めた。

食材を提供してくれる牛に感謝

家族経営の牧場で、一児の母は少し優遇されている。朝7時半ごろに仕事を始め、夕方には子どものために自宅に帰る。生き物相手の仕事は大変だ。月1回はヘルパーを頼んで丸一日休めるものの、毎日を牧場で過ごす。「牛が好きなので休みがなくても苦にならない」。朝夕2回の搾乳、餌やり、草地の堆肥づくり、牧草の種まきなどの合間に自分の時間を持つこともでき「自営業の良さ」もあるという。一番重要な仕事は牛の観察だ。発情の兆候など体調を把握し管理する。「牛は草を食べる。それもおいしそうに。人が利用できない草を乳や肉にして人間に提供してくれる」

西和賀の春の喜び

西和賀は豪雪地帯だ。山のてっぺんにある牧場では今、屋根から落ちた雪が庇にかかりそうになっている。積雪は2メートルを超えることも。「雪が降る前に○○しよう」と冬を中心に季節が回る。根雪が長く続き、そして春が一気に来る。畑で農作業が始まる前に山菜が顔を出し、牧場の周囲では1日10キロ集獲があることも。山菜取りに夢中になっている間に花の季節を迎える。「雪が深い分、春の喜びは大きい」

仕事は社会貢献でもある

仕事はお金を稼ぐためだけにするのではなく、何かしらの社会貢献活動でもある。「求職者は世界のどこかの歯車の一つとして貢献できているという仕事に出会ってほしい」と願う。自分は「好き」が仕事になっている。それはラッキー。酪農家として命のつながり、連鎖を消費者に伝えるような活動をこれからも続けたい。shigoto09-pic

菅原牧場:
搾乳牛36頭、育成牛20頭。草地約35ha、デントコーン5ha。牛舎で乳牛を放し飼いにし、搾乳時にパーラー(搾乳場所)で牛乳を搾るミルキングパーラー方式。年間約29万㌔の生乳を生産、全量を地元の第三セクター(株)湯田牛乳公社に出荷している

藤田春恵(ふじた・はるえ)氏プロフィール:
西和賀町生まれ、盛岡市立高、東京農業大農学部畜産学科卒。公益社団法人国際農業者交流協会の海外農業研修生として渡米、帰国後実家の牧場で就農。一児の母。

\藤田さんの言葉を聞いた、参加者のコメント/

・仕事に対する考え方、仕事自体のことをいろいろ聞けて、酪農の仕事のイメージがしやすかったです。社会貢献、つながり、牛への気持ち…お話ありがとうございました。

・なかなか聞けない酪農の話を聞けて良かった。普通に食べていたけど、もっと感謝しつつ、興味を持っておいしくいただきたいなあと思った。動物を相手にする仕事は忍耐が必要になると思いますが、とても楽しく仕事をされていて素敵だなあと思いました。

・岩手県内にも様々な生活の形があるのを感じました。大変なはずの仕事を生き生きと話してくださったのが、印象的でした。


 

「しごとトークカフェ」は2010(平成22)年度にスタート。藤田さんは102人目のゲストでした。
過去の様子はジョブカフェいわての施設内に常設のDVDで閲覧できます。