SYU-KATSU SPICES就活に役立つ話題集

シゴトビトの言葉学

[第6講]NPO法人インクルいわて事務局長・花坂圭一のコトバ

毎月1回開催の「しごとトークカフェ」。そこで社会人のゲストが語る、働き方、暮らし方、生き方とは?岩手で働く社会人たちからのメッセージを「シゴトビトの言葉学」として紹介します。

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花坂はかつて公務員志望だった。小さいころから、働くことや仕事に「社会貢献」のイメージを持っていた。しかし、大学卒業後就職したのは最初に内定を得た大手のカラオケチェーン店。入ったからにはと必死で働き、9年目に「本部で商品開発」という希望がかなう。喜び勇んで妻に報告すると、返ってきたのは「単身赴任で行ってください」という 言葉だった。ようやく家族の不満に気づき、退職して公務員を受験したものの、失敗。IT企業社員や代議士秘書などさまざまな職を転々とした。

ハンディを感じさせない社会に

転職を繰り返し、ようやくたどり着いたNPO。インクルいわては、子ども食堂を運営している。主に一人親の子どもの支援で、食事の提供だけではなく、長期の休みには宿題を一緒にやったり、慶弔用の服を貸し出したり、居場所づくりや地域づくりも含め包括的に親子を援助する。「参加者は多い日なら30人。遠くは葛巻町からやってくる」。インクルは英語のsocial inclusion社会的包摂から名づけた。経済的に大変な家庭もそのハンディを感じることがないような、生きやすい社会にしたいという願いがこもる。「経済的に苦しいと言ってもその背景はさまざま。子どもの進学資金もその一つ。 根本的課題を解決しないと問題はなくならない」

NPOはずっと同じ分野で活動できる

インクルいわては、子ども食堂のほか、県男女共同参画センターと県内陸避難者支援センターを運営している。避難者支援センターの活動では、全国各地に散らばった本県出身の避難者の自宅を訪ねる。「訪問すると暮らしぶりが分かる」。困窮した一人暮らしの高齢者に支援の道筋をつけ感謝されたことも。公務の仕事を補完しているが、「 異動は原則としてないので、取り組みたい課題に向き合いやすい環境はあると思う」。「やりたいことが明確で、資金にめどが立てば、NPOは働き方、生き方の選択肢の一つ」と若者にアドバイスする。

「人の役に立ちたい」が原点

「大企業を辞めて、NPOのコンサルタントをしている人もいる。社会的地位や経済的な優越だけでは得られない何かがあるから」と花坂さん。今はNPO法人の事務局長としてマネージメントを中心に仕事をしている。でも原点は「人の役に立ちたい」。困っている人悩んでいる人から話を聞き、解決の道筋をつける。現場時代も今も「感謝の言葉を聞けるのがやりがい」と迷いはない。

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NPO法人インクルいわて:
ひとり親とその子どもたちが楽しく、明るく、未来への可能性を広げられるよう、寄り添い支え合うNPO。包摂された社会(Inclusive Society)の実現に向け活動している。「インクルこども食堂」は子どもたちが安心して過ごせる居場所や地域づくりを進める活動。参加者、地域住民、企業が一体となって食事の提供だけではないさまざまな取り組みをしている。
花坂圭一(はなさか・けいいち)氏プロフィール:
盛岡市出身、岩手大卒、社会福祉士。飲食サービス業、IT関連企業、盛岡市非常勤職員などを経て、平成28年4月からNPO法人インクルいわて事務局長。

\花坂さんの言葉を聞いた、参加者のコメント/

・「こども食堂」が果たす本当の役割を考えさせられました。今までの経験が別の仕事で生きたこと、「一つ一つのことは無駄にしてはいけないし、ならない」という言葉が少し励みになりました。
・どんな経験も無駄にならないのだなと感じました。安定やお金も仕事をする上で大事なことだと思いますが、自分の理念や使命感なども自己実現のために大事なのだと思った。
・「こども食堂」やNPOについての理解が深まり、とても興味深かった。いろんな仕事をしていく中で「原点に返って考えてみた」という言葉が心に響いた。


 

「しごとトークカフェ」は2010(平成22)年度にスタート。花坂さんは99人目のゲストでした。
過去の様子はジョブカフェいわての施設内に常設のDVDで閲覧できます。